十月の空

十月の空は大きくて高くてそして深い

初めて死を実感したのが高校2年の時
友達がホンダのナナハンで空を飛んだ
リンゴ畑の中の細い道
飛ばす飛ばす
空気を引き裂き
静寂をぶち破るV4エンジンのエキゾーストノート
人も車もいない・・・はずだった
リンゴ畑が終わる頃
カーブの向こうから突然現れた軽自動車
ハングオンから必死に態勢を立て直そうとする
軽自動車の脇をギリギリですり抜ける
危ねーと思っただろう
助かった〜と感じただろう・・・
ホッとした瞬間
側溝が口を開けて待ち構えていた
突然前進を止められたバイクは友達を弾き飛ばした
そして20メートル以上空をすべり
ブロック塀に激突した

カーブで車に遭遇しなかったら
ハンドルを握る手の力を抜かなかったら
ブロック塀がなかったら・・・
17歳で人生を終える事は無かっただろうに

それ以来十月に死と向かい合わされる事が多い
何回も何回も
人だけじゃない
初めて飼った柴犬のフジもヒマラヤンのオキタも十月だった

何回も涙を流した
十月の空がこんなに
大きくて高くて深くなかったら
今頃、悲しみと悔しさの重さに耐えられず
押しつぶされていただろう

そんな十月も去り
小春日和の一日に
幸せを噛み締めている